時間に追われる毎日で食事の時間もどんどん短くなってしまっている現代人。早食いは、大事な歯の健康が損なわれる原因になります。ただでさえ柔らかいモノを食べる機会が増えて堅いものを食べなくなっているのでその危険性は高まる一方です。
将来、入れ歯になる可能性も高くなっています。
歯の健康チェック
- 歯がしみたり痛むことがある
- 歯茎にかゆみを感じることがある
- 歯を舌でなめるとヌルヌル・ザラザラした感じがある
- リンゴなどの堅いものをかじると歯茎から出血してしまう
- 歯茎をさわるとぶよぶよしている
- 鏡で見ると歯が長くなった気がする
- 甘いものが好き
- 食事のときあまり噛まない
- 食べるとき片側の歯で食べることが多い
どのくらいあてはまりましたか?
- 1個以下心配ありません
- 2~3個注意が必要です
- 4個以上すぐに対策が必要です
健康な歯は健康体の必須条件
現代人は柔らかいものばかり食べている
歯の役割として、まず誰もが思い浮かべるのは、生命の糧である食物の咀嚼でしょう。歯は食べ物が口に入ると、まず前歯で噛み切って、奥歯で飲み込みやすいようにすり潰します(ちなみに、岨聴力は歯とアゴの筋肉との合算で、実に50kg、ものすごい破壊力です)。
岨噂は、食べることに直結するので、歯が使えなくなるということは、私たち人間も含めて、動物にとって命取りになってしまいます。
あまり噛まずに飲み込んでしまったり、固いものがキライでやわらかいものばかり食べていると、唾液の分泌が悪くなり、結果としてミュータンス菌が増え、虫歯になってしまいます。
また、咀嚼には、実は知られざるこんなパワーもあります。食べ物を細かく噛み砕き、唾液とよく混ぜ合わせることで消化率をアップし、腸での栄養分の吸収を高め、また噛むことで脳の血液量を増し、脳の働きを活性化するのです。
咀嚼ひとつをとっても、歯がいかに私たに必要不可欠な存在かということが、わかると思います。しかし、この他にも、歯はいろいろな役割を担っています。
- しゃべるときに正しい発音ができるようにする。
- 食べたものが口からこぼれないようにする。
- 顔の形を整える。
- 噛みしめることで、パワーの発揮につながる。
- いざというときには、攻撃や防御の武器にもなる、など。
歯の役割は阻噂だけにあらず、このように歯はさまざまな場面で活躍しています。
歯の2大トラブル
私たちの歯を脅かす歯の二大疾患、それは虫歯と歯周病です。
むし歯
虫歯は、虫歯の原因菌としてよく知られている、ミュータンス菌が食べ物の糖分からネバネバした物質を作りだし、歯の表面にいろいろな細菌の塊である歯垢を付着させることから始まります。そして、この歯垢の中で糖分をエサにさらに繁殖した細菌が、強い酸を作りだし、歯の表面のエナメル質やセメント質、象牙質を溶かし、歯に穴を開けます。この状態が、いわゆるむし歯です。
虫歯は放置しておくと、やがては歯髄炎を起こし、さらには歯の根元(歯根)やアゴの骨まで虫歯菌に侵されることもあり、こうなると歯を抜かなくてはならないケースも出てきます。
歯周病
歯の周りの歯周組織が侵される病気です。歯肉部分にだけ炎症が現われる歯肉炎と、さらに深い歯根膜や歯を支える歯槽骨まで壊される歯周炎の2つに大きく分かれます。虫歯同様、歯垢や歯石が原因となって、歯肉に炎症を起こすことから始まります。
歯周病は、ひどくなると歯茎の骨が溶けだし、歯がグラグラと揺れるようになり、挙げ句の果てには、歯を失うことにもなる恐ろしい病気です。
1度生えたらもうあとは生えることはない
虫歯も歯周痛も、初期の段階ではほとんど自覚症状がないので、やっかいです。そこで私たちは歯がしみる、痛いという症状が出てはじめて歯科医に駆け込むことになるのですが、病院に駆け込んだときには、すでに重症であるケースが多いのです。こうした歯の疾患は、一度なってしまうと治療で進行を食い止めることはできても、元の状態に戻すことはできません。
私たち人間の歯は、一度生え変わって永久歯になつたら、もうスペアはないのです。ですから、大切な歯と健康を失いたくなかったら、常日頃から自分の歯の状態に関心を持つことが肝心です。
今日からはじめるむし歯、歯周病対策
日本人は世界でもむし歯が多い民族
12歳児の国別虫歯本数を調査したWHO(世界保健機構)のデータがあり、これを見ると、日本の児童の虫歯の多さには、驚かされます。
そして、現在、成人の歯の本数は、親知らずを除いた28本が基本ですがが、歳を重ねるごとに驚くべきスピードで歯を失っているのです。そして60歳では、なんと7人に1人が総入れ歯という危機的状況です。
欧米ではフッ素を虫歯予防として塗布することが多いのに加え、日本人に比べて歯に対する関心も高いようです。一方、日本人はその関心のなさが歯の疾患を呼び、結果的に総入れ歯人口を増やすことにつながっていると考えられます。
鏡で自分の歯をしっかりチェック
歯がしみる、痛いなどの症状が出ている人は今すぐ歯医者に行って診てもらうことです。これらの症状がある場合は、すでに歯になんらかの疾患がある証拠。痛みをこらえて放っておくと、将来、入れ歯のお世話になることになるでしょう。自覚症状がない人は、まずは鏡の前で自分の歯の状態をチェックしてみましょう。
- 歯を磨いたときに歯茎から血がでないか
- 歯肉が赤紫色になっていたり腫れていないか
- 歯と歯の間にぶよぶよした柔らかい部分がないか
- 歯肉を指で押すと膿が出ないか?
- 歯を噛みしめたとき痛みはないか?
- 歯に黒く歯ブラシで取れないものがないか?
食生活での注意
その1、物を食べるときは、よく噛む
噛むという行為は、歯茎とアゴを強化します。と同時に、噛むことで唾液が分泌されるので、虫歯や歯周病になりにくくなるのです。
唾液に含まれる重炭酸塩という成分には、虫歯や歯周病の原因となる酸を中和する働きがあり、歯が溶けるのを防ぎます。また唾液には、溶けた歯を石灰化する、抗菌作用がある、洗浄作用があるといった効果もあるので、歯を守るのに一役も二役も買います。
普段物をよく噛まずに飲み込んでしまう人は、唾液をたくさん分泌するために、ひと口30回以上噛むようにします。
その2、片噛みをしないように意識する
物を食べる時、 ほとんどの人は無意識のうちに片方の歯だけで噛んでいます。これを「片噛み」といいますが、これは歯のためにも身体のためにもよくない噛み方です。
片側だけで噛んでいると、咀嚼筋や関節の働きや食べ物の味覚などが偏ってしまい、反対側では食べた気がしなくなります。そして使わない側が虫歯や歯肉炎になってしまうのです。
片噛みの癖のある人は、意識して左右の歯を均等に使うように心掛けます。
その3、甘いものを避けだらだら長時間食べない
私たちは飲食をするたびに、歯についた細菌によって歯の表面が酸性になります。特に糖分を摂ると、強い酸性になります。そしてその酸性状態が長く続いていると、やがて歯が溶けだしてしまうのです。
ですから、口の中が酸性になっている時間を少しでも短くしてやることが、虫歯・歯周病対策のポイントになります。甘い物の摂りすぎ、ダラダラ食いは控えましょう。なお、どうしても甘い物がやめられないという人は、キシリトールなど今話題の新甘味料を使った食品を代用します。
唾液をしっかり出すための食べ物
歯は一度形成されると、代謝が極めて不活発になりますから、虫歯や歯周病を直接治す食べ物はありません。ただし、よく噛んで唾液をたくさん分泌するということでいえば、食物繊維を多く含んだ食品はおすすめです。食物繊維の多い食品は、よく噛まなくては飲み込めないので、自然と歯茎やアゴを強化し、唾液の分泌量も増します。食物繊維を多く含む食品は、玄米、干し椎茸、切り干し大根、ごぼうなど。これらをうまく食卓に取り入れて、唾液パワーをフルに生かしましょう。こういった食品を自炊することが難しい場合は、イサゴールなどもいいでしょう。こうした食物繊維は便秘解消にも役立つので便秘気味の人は意識して摂るといいでしょう。
ブラッシングが歯垢・歯石を丁寧に取り除く
いくら「食べ物」や「食べ方」に気を使っても、歯の表面に虫歯の原因となる歯垢をまったく作らせないことは、不可能です。そこで、付着してしまった歯垢を取り除くために歯磨きが必要になります。
ただし、ただ磨けばいいというものではありません。虫歯、歯周病予防と対処の決め手は、正しくブラッシングすることです。以下に正しい歯磨き法のポイントをまとめましたので、ぜひ実践してみてください。なお、歯磨きの重要なツール、歯ブラシはこんなところに注意して選ぶとよいでしょう。
歯磨きのポイント
- 奥歯の奥まで毛先が届くように、ヘッドは小さめのものを。
- 毛先は普通の硬さのものを。ただし、材質によって硬さに違いがあるので、自分に合った硬さを選ぶこと。
- 特に歯肉に炎症を起こしている人は、毛先が柔らかいものを。
歯のチェックで2~3個で注意が必要な人は
2~3個あてはまり注意が必要な人もまずは鏡の前で口の中をよくチェックしてみることです。歯の疾患はまず予防、そして不幸にも雁ってしまったら早期発見、早期治療が大原則なのです。
やっかいなことに、虫歯も歯周病も初期の段階では「痛い」「しみる」などの自覚症状がないのが特徴。ですから、常日頃から自分の口の中を観察する習慣を身につけ、異常が見つかったらすぐに専門医で診てもらうようにします。
正しいケアが大切
1日3回の歯磨きは正しく歯を磨いていますか? 実はほとんどの人は、歯の磨き方に癖があり、長い時間磨いていても、同じ場所を磨いているだけのことが多いようです。
虫歯・歯周病の予防と治療の決め手は、何といっても正しい歯磨き法で口の中を清潔に保つこと。ブラッシングのコツをしっかり身につけましょう。
正しい歯磨きのチェック方法
正しい歯磨きができているかどうかは、自分ではなかなか分かりにくいものです。最もよいのは、歯医者さんで歯磨きの状態を定期的に見てもらうことですが、これはなかなかできないこと。そこで、きちんと磨けているかどうかの判断材料となりそうな目安を以下に示しますので、歯磨きの後に、自分でチェックしてみましょう。
こんな場合はうまく磨けていない可能性があります。
- 口臭がある
- 楊子を使うと歯間の汚れが付いてくる
- 舌で歯の周りをなめ回すとヌルヌルした感じがする
- 歯の裏側を舌で触ってみて、歯と歯肉の境目が分からない
歯のチェックで1個以下で心配なしの人も油断は大敵
見事青信号の判定を受けた人は、おそらく常日頃から歯と心身の健康に気を使っていることと思います。しかし、油断は禁物!虫歯や歯周病を引き起こす細菌は、誰の口の中にも常住しています。そして私たちが食べ物を食べ続けるかぎり、そこに歯があるかぎり、常に虫歯や歯周病の危険はつきまとうのです。
そのことをしっかりと認識し、いくつになっても自分の歯で思う存分物が食べられるように、さらなる予防に努めましょう。